電波法とWi-Fi機器の正しい理解

価格が違っても電波の強さは同じ
はじめに
「高額なWi-Fi機器の方が、電波が強くて遠くまで飛ぶ」このように思われることは多いですが、実はこれは誤解です。
日本国内で使用するWi-Fi機器については、電波の強さ(送信出力)に明確な上限が定められています。
この記事では、なぜ価格差があっても電波強度は変わらないのか、その理由を電波法の観点から分かりやすく整理します。
1. 結論:電波の”強さ”は価格で決まらない

日本で使用されるWi-Fi機器は、すべて電波法に基づく技術基準を満たす必要があります。そのため、以下のような違いがあっても、出せる電波の強さは変わりません。
比較:
- 1万円の家庭用Wi-Fiルーター
- 100万円規模の業務用Wi-Fiシステム
→ いずれも「最大送信出力」は原則として同じ上限内で設計されています。
👉 価格が高い = 電波が強い、ではありません。
2. 電波法とは何を定めている法律か
電波法は、無線通信の混信防止や安全確保を目的として制定されています。Wi-Fi(2.4GHz帯・5GHz帯・6GHz帯)も例外ではなく、厳格に規制されています。
電波法で規定されている主な項目:
- 使用できる周波数帯
- 最大送信出力(電波の強さ)
- 変調方式
- 利用条件(屋内・屋外など)
規格ごと・周波数帯ごとに最大出力が定められており、この基準を満たしていない機器は、 日本国内では使用できません(違法となります)。
3. では、なぜ「高いWi-Fi」は高いのか?

電波の強さ以外に、価格差が生まれる明確な要素が存在します。「強さ」ではなく「賢さ・安定性・持続性」にコストがかかっているのです。
価格差を生む4つの要素:
- 同時接続に強い設計
多数の端末(スマホ、PC、タブレットなど)が同時接続しても速度低下しにくいCPU性能やメモリ容量、無線制御アルゴリズムを搭載。 - アンテナ・無線設計の品質
電波を「強く」するのではなく、ムラなく・効率よく飛ばすための高度なアンテナ設計。 - ローミング・安定性
複数アクセスポイント間での移動時に通信が切れないよう自動切替(ローミング)をスムーズに行う機能。 - 管理・運用機能
数百台の機器を一括管理したり、障害を自動検知してログを残したりする高度な管理機能。
4. 「電波が弱い」と感じる本当の原因

現場で「Wi-Fiが繋がりにくい」「遅い」と感じる場合、電波出力不足ではなく、環境要因が原因であることがほとんどです。これらは出力を上げても解決しません。
主な原因:
- ❌ 物理的な障害物:壁(コンクリート)、床、金属製の棚やロッカーによる電波減衰
- ❌ 設置位置の不適切:部屋の隅、床置き、棚の中など
- ❌ チャンネル干渉:近隣のWi-Fiや電子レンジなどとの電波干渉
- ❌ 性能不足:利用人数に対して機器の処理能力が追いついていない
5. 正しいWi-Fi改善の考え方

Wi-Fiの品質改善は、「電波を強くする」ことではありません。「電波を適切に配置・制御する」ことが基本です。
改善のアプローチ:
- ❌ 誤り:電波出力の強い(違法な)機器を探す
- ⭕ 正解:アクセスポイントの台数を増やして分散配置する
- ⭕ 正解:障害物を避けて、見通しの良い高い位置に設置する
- ⭕ 正解:利用人数に見合った性能の機器(業務用など)を選定する
6. Wi-Fi設計で重要な要素

快適なWi-Fi環境を構築するためには、機器の値段だけでなく、以下の要素を整理したうえでの「設計」が重要になります。
設計時のチェックポイント:
- ✓ 台数設計:広さと遮蔽物を考慮した必要台数
- ✓ 設置場所:天井設置や壁面など、電波効率の良い場所
- ✓ 利用環境:同時接続人数、用途(動画、Web会議など)
- ✓ 管理方式:クラウド管理か、ローカル管理か
まとめ
日本のWi-Fi機器は電波法により送信出力が制限されており、高額な機器でも電波が特別に「強い」わけではありません。
本記事のポイント:
- ✓ 電波強度は法律で上限が決まっている
- ✓ 価格差は「安定性」「同時接続性能」「管理性」によるもの
- ✓ Wi-Fi改善は「電波強度」ではなく「設計と配置」が重要
Wi-Fiが「遅い・切れる・届かない」と感じた場合、機器の値段を上げるだけでは解決しないことがあります。
まずは「設計」と「環境」を見直すことが、快適な通信環境への近道です。
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