ルーターの価格の違いは?― 見えない性能差は「NATセッション数」に出る ―

「ルーターって、1万円のものも10万円以上のものもあるけど、何が違うの?」

この質問は、実際の現場で非常に多く聞かれます。Wi-Fiと違い、ルーターの価格差は“電波”ではなく“中身の処理能力”に直結します。

この記事では、ルーター価格差の代表例として「NATセッション数」を取り上げ、なぜ業務用途では安価なルーターが限界を迎えやすいのかを、事実ベースで整理します。

結論:ルーターの価格差は「同時処理能力」の差

ルーターは単に「インターネットにつなぐ箱」ではありません。実際には、「通信を整理し」「行き先を判断し」「同時通信を管理する」交通整理役のような役割を担っています。

価格差は、👉 どれだけ多くの通信を同時に、安定して処理できるかに表れます。

TP-Link ER8411 業務用ルーター

業務用ルーター(例:TP-Link ER8411)は、膨大な同時通信を処理するために設計されています

まず押さえておきたい「NAT」とは

多くの環境では、社内ネットワークは「プライベートIP」を使用し、インターネット側は「グローバルIP」を使用します。この変換を行っているのが NAT(Network Address Translation) です。

NATセッション数とは何か

NATセッション数とは、「同時に通信できる接続の本数」を指します。

具体的にはこれら1つ1つがセッションを消費します

  • Web閲覧
  • クラウド通信
  • メール送受信
  • Web会議

PC1台でも、裏側で通信を行っているため、同時に数十〜数百のセッションを使うことがあります。

家庭用 vs 業務用:NATセッション数の決定的な差

このセッション数の上限が、価格帯によって大きく異なります。

一般的な家庭用ルーター目安:数千〜1万前後仕様が明確に公開されていない場合も多い少人数での利用を前提
業務用ルーター目安:数万〜数十万セッション(機種によっては100万以上)仕様として明確に保証されている多人数同時利用、常時接続サービス、VPN利用を前提

TP-Link ER605

ER605 – 小規模オフィス向け(~15人程度)

TP-Link ER7206

ER7206 – 中規模オフィス向け(~50人程度)

問題が起きやすい条件と症状

「利用人数が増える」「クラウド利用が多い」「Web会議が重なる」といった場合、セッション上限に達すると通信が詰まることがあります。

NATセッション不足で起こる典型的な症状

  • 特定の時間帯だけ極端に遅くなる
  • Web会議が頻繁に切れる
  • 一部の端末だけ通信できない
  • 再起動すると一時的に直る(セッションがリセットされるため)

価格差が出るその他のポイント

NATセッション数以外にも、以下の性能差が価格に反映されます。

① CPU・メモリ性能

通信をさばく処理能力そのものです。安価な機器では、通信量が増えると処理が追いつかず遅延します。

② セッション管理の精度

「使い終わったセッションの回収」や「不要通信の整理」が適切に行えるかどうかは、安定稼働に直結します。

③ VPN・セキュリティ処理

暗号化や検査処理はCPU負荷が非常に高い処理です。安価な機器では、VPNをつないだ瞬間に速度が激減することがあります。

TP-Link Omada 比較表

製品スペック比較表(セッション数やスループットの違いが明記されている)

TP-Link 製品群

用途に合わせて適切な性能の機器を選定することが重要

「回線は速いのに遅い」原因の一例

「回線は1Gbps」「Wi-Fiも問題なし」なのに遅い。この場合、ルーターが家庭用のままであることが原因のケースは珍しくありません。

どれだけ回線が太くても、出口が細ければ渋滞します。ルーターはまさにネットワークの「出口の幅」を決める機器なのです。

GT.engineerが重視している考え方

  • 価格だけで選ばない
  • 利用人数と用途を前提に考える
  • NATセッション数など“見えない仕様”を確認する
  • 将来の増加も考慮する

「とりあえずつながればいい」では、後から必ず限界が来るため、余裕を持った選定を推奨しています。

まとめ

  • ルーターの価格差は性能差(特に同時処理能力)
  • 特にNATセッション数は業務利用において重要
  • セッション不足は速度低下や切断の直接的な原因になる
  • 回線やWi-Fiだけを疑っても解決しないことがある